2010/04/26

妖怪をみた



先日、妖怪を見た。

もとい、美輪明宏の近代能を見に行った。
初めての生・美輪明宏。
彼?彼女は妖怪のようだった。


近代能とあったので、
眠くなったらどうしようと心配していたけど
始まってみたら、のっけからの美輪ワールド炸裂。

現代的な舞台だった。


“美しいものを羨んではならない。

なぜならば、その人は
美しすぎるが故の
過酷極まる懲罰が課せられる
恐ろしい運命にあるのだから。

それがこの世の正負の法則なのである。

この二本の作品は、
その却罰の物語なのである。”

舞台は「葵上・卒塔婆小町」の2本立て。
美輪明宏は「葵上」では生霊の役を、
「卒塔婆小町」では、百歳の老婆から絶世の美女を
演じ分けていた。


しっとりじっとりした雰囲気の舞台上。
登場人物誰もが、湿気を帯びていた。

そして、妖怪・美輪明宏が登場。

不穏な空気のなか、
舞台中央にかかってた 豪華絢爛金色の大きな着物が、
くるくるくる〜っと捲れ上がって、
じ〜っとりとお出まし。

彼女は誰よりも、怪しく艶かしかった。
目が人間の目じゃなかった。
ありゃ もののけの目だ。


そして、彼女の衣装と装飾品は
見たこと無いくらいに、きらきらと
これでもかっ!てくらいに輝いていた。

こんな輝きがあるのねぇ〜と、
思わずうっとりとした。
そして、彼女が出てくると
いい香りも漂ってくる。
手抜きが無い。
喋る声は、歌を歌っているか
呪いをかけているかのよう。

なんて完璧にやりこなしているんだろうと、
感心しっぱなしだった。

観たあとの満足感もボリューミー。

最後、美男2人と
キラキラした、白いドレスの美輪明宏が
もくもくの煙の きらきらが降り注ぐなかで、
踊り狂って幕を閉じた。

それはまるで夢の中のようで、
今までの狂気の世界が
浄化されていくかのようだった。

観たあとはしばらく
美輪ワールドに圧倒されてしまい
放心状態。
あの妖怪に精気を吸い取られてしまったんじゃないかと
思ってしまうほど。



たまに こういう完成度の高いものを観ると
言いようの無い満足感で満たされる。
芸の肥やしには、
やはりいいものにたくさん触れるのが
一番だとつくづく思う。
まだまだ知らない未知の世界に、
出来る限り触れていきたい。

そして、いまはたっぷり充電の時期。

そろそろ充電したものを
小出しにしていく時期でもあるなぁ。