「うまい筈よ、肉を喰うのじゃない、命を喰うのだ。」
「まるで鬼のよう。」
「鬼と同じだ。」
これは、杉浦日向子さんの「百日紅」(ちくま文庫)、“女弟子”のお話中での葛飾北斎と女弟子お政が、すっぽん鍋をつついているときの会話。
肴屋にすっぽんを、その場でさばいてもらい生き血を抜いて鉢にいれ、ブツブツ手、足、首を切って甲羅をひっぺがし、内臓なんかをとって鍋にして、ふはふは言いながら、汗かきながら鍋をつついている。酒に生き血を混ぜて飲んでいる。「夕日の色。ギヤマン(ガラス)の盃に入れたらさぞ、美しかろうねぇ」と言いながら飲んでいる。
お政が、「さっきまで生きてたの。」
と言いながら食べている。
「命を喰う。」
命のあるものは、命を喰って命を繋いでいるんだなぁとストンと思う。
当たり前のことなんだけど、当たり前すぎて忘れてしまいそうなこと。だけど忘れちゃいかんこと。
ご飯を食べる時の「いただきます」「ごちそうさまでした」は、お行儀良くってことではなくて、食べ物に対して「お命ありがたくいただきます。」「御馳走様でした」と、食べ物に対しての言葉なんですって。これって大事なことですな。
「命を喰って命を繋ぐ」
リアルで、最近妙に腑に落ちた言葉。
「この世に生きている生物すべて、命を喰って命を繋いでいる」
命のリレーですな。壮大なリレーですね、これは!ふはっ!!
そこにいま、私たちがいるのですな。
ふはー、すごいや。
「百日紅」、とても好きな世界観です。