2012/02/24

命を喰う

「うまい筈よ、肉を喰うのじゃない、命を喰うのだ。」

「まるで鬼のよう。」

「鬼と同じだ。」

これは、杉浦日向子さんの「百日紅」(ちくま文庫)、“女弟子”のお話中での葛飾北斎と女弟子お政が、すっぽん鍋をつついているときの会話。

肴屋にすっぽんを、その場でさばいてもらい生き血を抜いて鉢にいれ、ブツブツ手、足、首を切って甲羅をひっぺがし、内臓なんかをとって鍋にして、ふはふは言いながら、汗かきながら鍋をつついている。酒に生き血を混ぜて飲んでいる。「夕日の色。ギヤマン(ガラス)の盃に入れたらさぞ、美しかろうねぇ」と言いながら飲んでいる。


お政が、「さっきまで生きてたの。」

と言いながら食べている。


「命を喰う。」

命のあるものは、命を喰って命を繋いでいるんだなぁとストンと思う。
当たり前のことなんだけど、当たり前すぎて忘れてしまいそうなこと。だけど忘れちゃいかんこと。

ご飯を食べる時の「いただきます」「ごちそうさまでした」は、お行儀良くってことではなくて、食べ物に対して「お命ありがたくいただきます。」「御馳走様でした」と、食べ物に対しての言葉なんですって。これって大事なことですな。

「命を喰って命を繋ぐ」

リアルで、最近妙に腑に落ちた言葉。

「この世に生きている生物すべて、命を喰って命を繋いでいる」

命のリレーですな。壮大なリレーですね、これは!ふはっ!!
そこにいま、私たちがいるのですな。
ふはー、すごいや。


「百日紅」、とても好きな世界観です。